法律用語はおもしろい-「未成年」の「成年」被後見人?

「未成年後見制度」って知ってますか?

「未成年後見制度」って聞いたことありますか?

先日,成年後見制度に関するコラムを書きました。

「未成年後見制度」と「成年後見制度」は名前がよく似ていますが、全く別の制度です。

成年後見制度とは?

成年後見制度は、認知症などによって判断能力が低下した方に代わって、成年後見人等が預金の管理をおこなったり、施設への入所契約を結んだりするものです。

未成年後見制度とは?

【民法第838条】 後見は、次に掲げる場合に開始する。
一  未成年者に対して親権を行う者がないとき、又は親権を行う者が管理権を有しないとき。
二 【略】

未成年後見制度は「未成年者に対して親権を行う者がないとき、又は親権を行う者が管理権を有しない」場合に利用されるものです。

未成年者=20歳未満の人は判断能力がまだまだ未熟だと考えられているため,原則として自分一人で大人と同じように契約等を締結することができません。

<注意!>2018年6月13日に成立した改正民法によって、成年年齢が18歳に変更になりました。詳しくはこちらをご参照ください。

【関連記事】民法改正によって成年年齢が18歳になりました。

たとえば携帯電話を買うとか,アルバイトをするとかといったことは自分一人ではできません。その他,アパートを借りるとか,奨学金を借りるとか,銀行口座を作るとかも一人ではできません。

自分一人でできないとしらたどうやって携帯買ったりアルバイトしたりすればいいんだということになりますが,通常は親(親権者)の同意を得て行えばOKです。

では,親(親権者)がいない場合はどうなるのでしょうか。例えば,交通事故等で両親とも亡くなってしまいましたという場合です。

同意してくれる人がいないわけですから,このままだと有効な法律関係を築いていくことができません。

そこで登場するのが未成年後見制度です。

つまり,両親がともに亡くなるなどして「親権を行う者」がいない場合に,未成年者のために「未成年後見人」という人を家庭裁判所が選任して,この人が未成年者の行為に同意したりして未成年者の保護を図りましょう,というのが未成年後見制度です(ざっくりいうと)。

未成年者は成年後見制度を利用することができるか?

さて,「成年」後見と「未成年」後見という字面だけを眺めていると,

  • 成年後見  → 大人(成年者)が使う。
  • 未成年後見 → 未成年者が使う。

と単純に考えてしまいがちですが,厳密には正しくありません。

制度上は未成年者が成年後見制度を利用することは可能です(反対に、大人が未成年後見制度を利用することはできません。)。

【民法第7条】
精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。

条文上,成年被後見人は「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」と定義されております。ここに年齢制限はありません。

というわけで,未成年者であっても「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」に該当すれば,成年後見制度を利用できます。

たとえば,知的障害のある未成年者の場合が考えられます。

なんでそんな紛らわしいネーミングになっているのか?

「そんな紛らわしい名称の付け方をするんじゃない」という声も聞こえてきそうですが,おっしゃる通りですので返す言葉がありません。

 未成年者についても、成年後見制度の適用は排除されてはいない(・・・)のでこれを成年後見制度と呼ぶのは必ずしも正確でない。(我妻・有泉コンメンタール民法、総則・物権・債権【第3版】p.66)

このようにはっきり「正確でない」と言い切ってしまっている法律書もあります。

なんでこんな制度の名前になってしまったのかという点について,ものの本には

未成年者もこの制度(成年後見制度)を利用できないわけではない。ただ,未成年者は,未成年後見制度による保護を受ければよく,この制度を利用する必要がほとんどない。そこで,ほぼもっぱら成年者が利用する制度ということから,「成年」後見制度と呼ばれている。(佐久間毅『民法の基礎 1』第3版,p.89)

という説明がありました。

つまり,未成年者が知的障害などで成年後見制度を利用できる場合であっても,未成年者は未成年後見制度を利用すれば十分だから,成年後見制度は使わなくていいでしょ,だから名称も「成年」後見でいいでしょ,ということです。

分かったような分からないような説明ですが,だったら制度上も「未成年者は,成年後見制度は使えません」とした方がはるかにわかりやすいと思います。

現行制度では「未成年」の「成年」被後見人という人が存在しうるということになってしまって,一瞬聞いただけでは「なぬ!?」となってしまうこと必至です。

なお,Wikipediaでは,未成年者が成年後見制度を利用できないとまずい一場面として

未成年の知的障害者が成年に達して未成年後見が終了する場合に法定代理人がいなくなってしまうことを防ぐため,未成年者の段階でも成年後見の対象となりうる(民法7条,11条本文,15条1項本文の請求権者に未成年後見人,未成年後見監督人が入っているのもそのためである)。

という説明があります。

実際上はこういうケースってなかなかないでしょうから,めったに混乱は生じないでしょうが,それにしてもものごとの名称って大事だなと考えさせられますね。

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