法律はおもしろいー「振り向けば愛」の法理・「幼くても恋」の法理

先日、「法律用語はややこしくておもしろい」という記事を書きました。

今回は、法律学の「学説」に関するお話です。

「学説」というのは学者さんが表明した自分の意見のことです。

他の学問分野もそうですが、法律学の世界にも実に多くの学説があります。その中には、「マジかよ!?」と思わず突っ込みたくなるものがあったりします。

以下の引用文は、ある著名な国際法学者の書いた論文(村瀬信也「国際紛争における『信義誠実』の原則の機能:国際レジームの下における締約国の異議申立手続を中心に」)の一節です。

なお、この10年ほどの間に法源論の争点の一つに、ソフト・ロー(・・・)の法的効果をめぐる問題があるが、この点については・・・「石本・村瀬論争」がある。著者(=村瀬)はソフト・ローの規範性に関しその内容がハード・ローとして形成された後に、retrospective(=回顧的、遡及的)な観点から国際法の形成過程における指標としてその意義を評価すべきものと考える(・・・これを俗に「振り向けば愛」の法理という)のに対して、石本教授は・・・ソフト・ローに一定の法的効果をprospective(=将来的に、見込まれる、予期しうる)に肯定する立場(「幼くても恋」の法理!)を展開された。学界を二分するこの論争は未だ決着をみていない。

国際法学のうちの法源論に関するマニアックな議論ですので内容の詳解は避けますが、着目すべきはこの「振り向けば愛」の法理・「幼くても恋」の法理などという、およそ法学論文に似つかわしくない名称の法理が展開されていることと、それが「学界を二分する論争」だということです。

法学者というのはこんなことを大真面目に議論して、論文にまで書いてるんですからなんとも愉快な人種です。

今後も「法律はおもしろいシリーズ」続けて行こうとおもいますので、次回もどうぞお楽しみに。