【解決事例】振り込め詐欺の受け子が詐欺罪と窃盗罪に問われたケースで、執行猶予判決を得ることができました!

事案の概要

被告人は20代前半の男性です。

犯行当時は独身でしたが裁判時点では結婚しており生まれたばかりの子もいました。

Twitterで見つけたアルバイト募集に応募し、説明を受けている途中でこれは振り込め詐欺だと気づきながらも、借金のためお金に困っていたことから犯行に加担することを決意しました。

名前も知らない共犯者とともにターゲットとなった高齢女性の自宅を訪問し、通帳をだまし取って、近くのATMでその通帳から現金を引き出しました。

どういう弁護活動をしたか。

私は国選弁護人として勾留段階から弁護活動を行いました。

本件はいわゆる振り込め詐欺のケースで被害者がいます。被害者に対してできる限りの対応をすることが不可欠です。

まず、検察官を通じて被害者と連絡を取り、謝罪と示談の申入れをしました。

被害者は高齢で、今回詐欺に遭ったことに大変ショックを受けておられましたので、いそがず時間をかけて交渉をおこなっています。その結果、被害者の方と示談をすることができました。なお、被害者に対しては、実際の被害額(引き出し額)に上乗せして、精神的なショックに対する慰謝料という趣旨の金額を交付しています。

同時並行的に起訴後保釈請求をしました。起訴の翌日には保釈が許可され、被告人は釈放されています。

公判期日では、被害者と示談が成立していること、被告人が反省していること、被告人の妻や雇用主が被告人の更生のために監督することを約束していることなどを強調しました。

被告人の職場の雇用主が非常に協力的で被告人の更生のためにできる限りの支援を行ってくださいました。保釈保証金や示談金も雇用主が用意してくださっています。

判決は!?

判決は「懲役3年、執行猶予5年」でした。

なんとか執行猶予を得ることができました!

感想と注意点

今回のケース、検察官の求刑は3年6月でした。

執行猶予判決は「懲役3年以下」等の場合にしかつけられませんので、この検察官の求刑は「絶対に執行猶予は付けないでください」という裁判官へのメッセージともとれるものでした。

その背後には振り込め詐欺が社会問題として日本中で猛威を振るっているという現実があります。こうした犯罪に安易に加担する者が出てこないように、厳しく処罰するべきだという考えです。

裁判官も判決言い渡しの際に「実刑判決も考えました」とおっしゃっておられました。

しかし、他方で、被害者に対して謝罪し、被害弁償、示談が成立していること、被告人の妻や雇用主等が被告人を監督していくことを約束していることなどを考慮して、執行猶予判決となりました。

判決は「懲役3年、執行猶予5年」ですから、まさに執行猶予がつくかつかないかギリギリのケースだったといえるでしょう。

被害額がもう少し高額だったり、犯行を複数回繰り返していたり、雇用主の献身的な協力が得られなかったりした場合などには、執行猶予判決は得られなかった可能性が高いと思われます。

振り込め詐欺の受け子については、まだまだ社会経験の少ない若者がSNS等で「わりのいいバイトがある」等の誘い文句につられ、安易に加担してしまうケースが多発しています。

しかし、その代償は非常に大きく「わりにあう」ものではありません。そして、なにより多くの被害者を生み出してしまいます。こうした犯罪には絶対に加担しないようにしましょう。