保釈中の被告人が国外逃亡!

水戸地裁で保釈に関する「事件」があったようです。

判決直前、被告が出国 保釈中 水戸地裁が公判延期

この記事によれば、被告人は平成29年3月15日に600万円の保釈保証金を納めて保釈されていましたが、10月6日の公判期日に出頭しなかったようです。調べてみると9月末に海外に出国していたとのこと。

こちらの記事でも書きましたが、保釈中は社会内で生活できるとはいえ完全に自由に行動できるというわけではありません。場合によっては保釈を取り消されてしまうこともあります。

刑事訴訟法 第96条 第1項
裁判所は、左の各号の一にあたる場合には、検察官の請求により、又は職権で、決定を以て保釈又は勾留の執行停止を取り消すことができる。
一  被告人が、召喚を受け正当な理由がなく出頭しないとき。
二  被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
三  被告人が罪証を隠滅し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
四  被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくは加えようとし、又はこれらの者を畏怖させる行為をしたとき。
五  被告人が住居の制限その他裁判所の定めた条件に違反したとき。

このケースでは刑訴法96条1項2号の「逃亡」に該当しますので保釈を取り消されるのも当然です。

また、保釈保証金も没取されています。

記事では「没収」となっていますが法律用語では「没取」(ぼっしゅ)と言います。

刑事訴訟法 第96条 第2項
保釈を取り消す場合には、裁判所は、決定で保証金の全部又は一部を没取することができる。

記事を見るかぎりはおそらく全額没取されていると思います。海外に逃亡して出頭する意思がないことが明白である上、出頭を確保することもきわめて困難ですから、全額没取もやむなしでしょう。

私も、弁護人として保釈請求することがあります。さいわい被告人が逃亡したという経験はありません。皆さん公判期日に出頭し、きちっと判決の言い渡しも受けておられました。立派だと思います。

被告人が逃亡してしまったとしたら弁護人としてはかなりつらいと思います。「この人は逃げも隠れもしません!」というスタンスで保釈請求をする手前、逃げられてしまうとメンツが潰れてしまいます。

裁判所も「この人なら逃げたりしないだろう」と信用して保釈決定をするわけですから同じ気分だと思います。

このケースでは、検察官は保釈決定に対して抗告までしておりますので、保釈に反対の立場でした。「そらみたことか!」という感じでしょうか。

ただ、検察官としてもせっかく捕まえて裁判にまでかけた被告人が、有罪になる前に逃亡してしまっているわけですから、「無念・・・。」という気持ちもあるでしょう。

いずれにせよ、逃亡されると法曹三者はだれも喜びません。

保釈制度の運用の硬直化(保釈が認められにくくなってしまう)にもつながってしまうので、社会的な影響も無視できません。いいことなど何一つないというのが保釈後の逃亡なのです。