婚姻適齢-男と女で結婚できる年齢が違うのはなぜか?

<注意!>2018年6月13日に成立した改正民法によって、下記の内容が変更になりました。詳しくはこちらをご参照ください。

【関連記事】民法改正によって成年年齢が18歳になりました。

婚姻適齢とは?

「婚姻適齢」という言葉をご存じでしょうか。

「婚姻適齢」ではなくて「婚姻適齢」です。

婚姻適齢とは、有効に婚姻をすることができる最低年齢のことを言います。民法731条に定められています。

(婚姻適齢)
第731条
男は、十八歳に、女は、十六歳にならなければ、婚姻をすることができない。

「この年齢にならないと法律上結婚することができない」という意味であって、「男・女が結婚するのに最も適切な年齢」という意味ではありませんのでご注意ください。

どうしてこんな規定をおく必要があるのか?

婚姻によって我々は家族を形成するわけですけれども、家族を形成し、維持し、発展させるにはそれなりの能力や社会的な経験が不可欠です。肉体的・精神的にあまりにも幼い場合には家族を自ら形成・維持・発展させることはできないでしょう。また家族を維持するには当然ながらお金も必要です。

さらにいえば、家族は社会の基本的な構成単位です。家族の健全な形成・維持・発展は、社会的にみても重要なことです。

つまり、肉体的・精神的そして経済的にも健全な婚姻をする能力を欠くと考えられる年少者の婚姻を禁じ、家族および社会の健全な形成等を図ることが婚姻適齢という規定をおく理由です。

男女で異なる婚姻適齢-男18歳、女16歳

条文を読んですぐ気づくように男女で婚姻適齢が異なっています。

男は18歳、女は16歳になるまで結婚できません。2歳の差があります。

歴史的に見ても男性の方が女性よりも婚姻適齢が高く設定されています。

8世紀ごろの律令期には男性15歳、女性13歳と定められていたが、平安時代以降規定は空文化し、江戸時代に至っても一般的な規定は存在しなかった。

「主要国の各種法定年齢 選挙権年齢・成人年齢引下げの経緯を中心に」p.7

明治31年の民法第四編・第五編(親族、相続)では、婚姻適齢は男17歳、女15歳となっていました。

第七百六十五絛 男ハ満十七年女ハ満十五年ニ至ラサレハ婚姻ヲ爲スコトヲ得ス

なぜ男女で年齢が違っているのか。

婚姻適齢に男女で差がある理由としてよく言われるのが、「男女で成熟度に差異があるから」というものです。

ある法律書には次のような記述があります。

旧法は、男17歳、女15歳を婚姻適齢とした。これは、人種改良のため、また風俗のため、従来の早婚の弊を改めんがために、外国の統計と学者の意見を参照して医科大学が研究の結果適当と認めた最低年齢だとされた(後略)。

(新版注釈民法(21)復刊版。【DVD】193ページ。)

ここでは「外国の統計と学者の意見を参照して医科大学が研究の結果適当と認めた」とされており、男女で差をつけることに医学的根拠が存在すると説明されています。

また、外務省のホームページでは「児童の権利に関する条約」第2条との整合性についての議論の中で次のように説明しています。

すなわち、婚姻は、社会の基礎的単位である家族を新たに形成する行為であるから、ある程度の成熟に達していない者には認めるべきでなく、それゆえ、法律は,婚姻に必要な成熟に達していないおそれのある若年者の婚姻を一律に禁止している。しかし、男女の間には、肉体的・精神的側面において、婚姻に必要な成熟に達する年齢に差異がある。婚姻適齢の差異は、このような男女の肉体的・精神的側面の差異に対応したものであって、合理性があるから、条約第2条には抵触しない。

「B.国内法における最低法定年齢」  

【参考】児童の権利に関する条約
第2条
1 締約国は、その管轄の下にある児童に対し、児童又はその父母若しくは法定保護者の人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的、種族的若しくは社会的出身、財産、心身障害、出生又は他の地位にかかわらず、いかなる差別もなしにこの条約に定める権利を尊重し、及び確保する。
2 締約国は、児童がその父母、法定保護者又は家族の構成員の地位、活動、表明した意見又は信念によるあらゆる形態の差別又は処罰から保護されることを確保するためのすべての適当な措置をとる。

男女で差異をもうけることに合理性はあるか?

さて、こうした理由であなたは納得するでしょうか。

「男女で生理的成熟速度に違いがある」という説明が正しいか否かについては医学的・生物学的な考察が必要となるでしょう。ここについては門外漢ですから言及を避けます。

ただ、仮に男女の生理的成熟速度に違いがあるとしても、それをそのまま結婚という法制度に反映させる必然性もありません。

また、婚姻適齢をもうけた制度趣旨に照らして考えれば、人の肉体的・精神的側面のみではなく経済的・社会的な側面も考慮に入れる必要があります。

このように考えると、「男女で生理的成熟速度に違いがある」という理由で男女の婚姻適齢の差異を正当化するのはどうも怪しそうです。

私自身の意見としても婚姻適齢に男女差をもうける合理的理由は乏しいと思います。

改正するとしたら何歳が適切か?

では、法律を改正して婚姻適齢の男女差をなくすとした場合、具体的にはどう考えるべきでしょうか。

考え方としては大きく2パターンあると思います。

  1. 男女とも18歳で統一する
  2. 男女とも16歳で統一する

現在では、義務教育を終えた段階(15歳)で就職する人は少数で、高校教育が事実上義務教育的に実施されていることに鑑みると高校卒業程度をもって一つの基準とするのが適当ではないかと思います。

選挙権年齢も18歳ですし、今後成年年齢も18歳に引き下げられることが検討されていることに鑑みれば婚姻適齢についても18歳に設定するのが適切と思います。

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