養育費が払えない!

相談者

30代 男性

相談内容

2年前に妻と離婚しました。これまで離婚の際に決めた養育費(毎月5万円)を遅れることなく支払い続けてきました。

最近、再婚し、再婚相手との間に子供も生まれました。再婚相手は出産直後ということでまだ働ける状態ではありませんので、私の収入が唯一の収入です。

しかし、仕事の残業も減って手取り額が少なくなり、養育費の支払いがきつくなってきました。

養育費の支払額を下げてもらいたいのですが、どうすればいいでしょうか。

こうして解決!

離婚をするときには子の養育費について決めなければならない! 

離婚をする際、夫婦に未成年の子がいる場合には、養育費の額について取り決めをします。

(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)
第七百六十六条 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。

ここにいう「子の監護に要する費用の分担」がいわゆる養育費に関する規定です。

離婚の際の養育費の取り決めについては、ある程度の「相場」がありまして、これにもとづいて決定されるケースが多いと思われます。

【参考】「養育費・婚姻費用算定表」

もっとも、この算定表はあくまでも目安であって、この通りに決めなければならないという性質のものではありません。

実際、この算定表の基準から外れた金額を養育費として合意し、支払いをしているケースもたくさんあります。

今回の相談者の方が支払っていた養育費の額も、この「相場」からすれば若干高めでした。

養育費の支払額の変更はできるか?

養育費の取り決めを一度してしまったら、二度と変更がきかないというものでもありません。

「事情の変更」がある場合には、養育費の減額も認められる場合があります。

では、どのような「事情の変更」があれば養育費の減額が認められるのでしょうか。

失職により収入が減った(なくなった)場合や、再婚等により扶養しなければならない家族が増えた場合が典型的なケースとしてあげられることが多いですが、これ以外の事情であっても減額が認められる場合もあります。

相談者のケースでは、再婚し、再婚相手との間に子供が生まれております。こうした事情があれば養育費減額を認められる可能性が高いでしょう。

なお、残業が減って手取り収入が減ったということも相談者はおっしゃっておられます。これも、養育費の減額が認められる一つの事情となります。

養育費減額を求める方法は?

では、具体的にどのような方法で養育費減額を求めていけばよいのでしょうか。

養育費は当事者間の話し合いで決めます。ですから、相談者と元妻とのあいだで話し合いをして、養育費の減額を求めていくことができます。

しかし、一度決めた養育費の額を変更するわけですし、養育費の支払いを受けている側(このケースでは元妻)からすれば受け入れにくいものです。ですから、当事者の話し合いで合意に至ることはあまり期待できません。

相談者のケースもLINEのメッセージや電話で養育費の減額について話し合いをしておりましたが、合意には至っておりませんでした。

養育費減額請求調停の申立て

そこで、家庭裁判所に養育費の減額請求調停の申立てをしました。

調停では、調停委員と裁判官が、当事者から聞いた話や提出された資料から減額を認めるかどうか、認める場合どれくらいの額が適切かについて、議論の交通整理をしながら合意が成立するように促してくれます。

調停の申立てと同時に、再婚し子供も生まれたこと、給料も下がっていることを調停委員に説明しました。またそれを裏付ける証拠として戸籍謄本と給与明細を提出しました。

調停では、再婚して子供が生まれたことを理由として、現状の5万円から3万円に減額する旨の調停案が裁判所から提案されました。

相手方もこの調停案を受け入れて下さったので、無事調停成立となりました。

感想と注意点

相談者がおっしゃっていた残業が減って給料も下がっている点については、減額幅が比較的少額だったため、裁判所としては減額の理由にはならないと考えたようです。

離婚後に生じた事情の変更であっても、離婚当時、当然予想できた事情である場合には、それを理由とした養育費の減額は認められない場合もあります。

例えば、今回の相談者は再婚・出産を理由として減額を認めてもらえましたが、離婚の際、養育費を決めるときに再婚等がすでに予想されている場合には、再婚等を理由とする減額は認められません。

他にも、給料が減ったという事情も、離婚当時、将来の給与が減ることが予想可能な場合には、これを理由とする養育費を減額は認められにくいでしょう。

したがって、離婚の歳、養育費の額を決めるときには、将来的な自分の収入の変動や、扶養家族の変動も予測しながら決める必要があります。

支払いが苦しくなったら、調停を申立てて適正な金額に減額してもらえばいいと考えるのは甘いということです。

これは減額を求める側だけではなく、増額を求めたいという場合にも当然当てはまります。

「子供の養育」という極めて重要な事項に関する合意なのですからこれくらいの慎重さが求められてしかるべきでしょう。